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Thinking, Fast and Slow

A 君はアニメ・ラノベを愛するオタクで日本橋によく行きます。A 君の説明として最も可能性が高そうなものを選んでください:

  1. 工学部所属の大学生である
  2. 山岳部に所属していて交友関係が広い
  3. 工学部に所属していて服装に無頓着だ
  4. 社会学専攻の大学院生である

読みかけの本についての記事です。 まだ上巻しか読んでない。

「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか」

一言でいえば、私たちの脳がいかにして認識を誤るのかという話です。

連言錯誤

本書によると脳は 2 種類の思考モードを持っています。 これを「システム 1」、「システム 2」と呼び、 システム 1 は自動的に動作する速い思考でシステム 2 は意識的に行われる遅い、すなわち熟慮を要する思考を指します。

システム 1 は直接的に生存のための思考モードといえるでしょう。 たとえばシステム 1 は 連想するのが得意 です。 これは、過去の経験を生かし危険を回避できた脳が淘汰を生き残ることができたからです。 過去の経験を生かすというのは、現在の状況から過去を連想し、過去をもとに未来を予測できるということです。 連想能力を持ち未来を予測できた個体が生存してきたから、私たちの脳は連想が得意になっています。

対して、システム 2 は深く思考が必要な概念が得意なモードです。 たとえば { 234 * 9 } を暗算するときにシステム 2 が活躍します。

私たちの脳ではシステム 1 とシステム 2 が共存しています。 しかしシステム 1 は自動的に働くので、意識しないとシステム 2 で思考することはできません。 冒頭の 「A 君はアニメ・ラノベを愛するオタクで日本橋によく行きます。」 を見た時、システム 1 は自動的に 連想 します。 典型的なオタク像とか、身の回りのアニメ好きの人物を思い浮かべてしまうのです。 そして「A 君の説明として最も可能性が高そうなもの」 は「想像した人物と一致するもの」と読み替えられて処理されます。

山岳部や社会学部は選ばれず工学部の学生が選ばれるのはたぶん正しくて、問題は

  • 工学部所属の大学生である
  • 工学部に所属していて服装に無頓着だ

この選択肢です。

私の知っている典型的なオタク像は服装に無頓着だから、私が答えるなら 3 を選ぶと思います。 そういうふうに問題を作りました。あなたは 3 を選びたくなりませんか。

しかし可能性が高いのは本当に 3 なのか、システム 2 を起動させる必要があります。

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ベン図を描いてみます。 「工学部に所属していて服装に無頓着だ」は両領域の重なる紫色の部分ですね。 ここで 1 つめの選択肢「工学部所属の大学生である」を思い出してみましょう。 「工学部に所属していて服装に無頓着」な人々はすべて「工学部所属の大学生」に含まれます。 A 君が工学部所属の大学生である可能性は、工学部に所属していて服装に無頓着である可能性よりも 必ず 高いのです。

考えてみればあたりまえのことです。 しかし脳は連想を止めません。 簡単な論理すら無視してオタクを連想し、誤った認識を生むのです。

本書はこれを「連言錯誤」と呼びます。 連言錯誤は選択肢を

  • 工学部所属の大学生である
  • 工学部に所属していて服装に無頓着だ

の2 つだけにしても起こります。 一見信じがたい、鮮やかともいえるような錯誤です。

まとめ

さて、この記事で述べた連言錯誤ですが、これは本書のわずか 2 章くらいの内容です。 全体では下巻含めると全 38 章あり、連言錯誤の他にも様々な誤認識が紹介されています。

いかに脳がバイアスに晒されているか、そしていかに私たちの認識は誤っているのか。 無意識的に発生する誤りに気づくことなく生きてきましたが、 誤り方のパターンを知っていれば、次に誤ったときには気づくことができるかもしれません。

読み返し血肉にしたい一冊です。